目を覚ました海堂は、自分が涙を浮かべているのに気が付いた。




CRIMSON
大花カツヲ


 何かつらい夢を見ていて起きたような気がするが内容を思い出せない。どんな夢を見たのかと、ボーッとしながらしばらく考えてみても思い出すことはできなかった。

「ちっ…」
 
 時計を見るとまだ早い時間だったが、海堂は少し苛立ちながら荒っぽく涙をぬぐって学校へ行く準備を始めた。
 学校に着いてからも海堂はいつものように授業を受けて、放課後には部活に出ていた。
 海堂が着替えてコートへ行き、コートの隅でウォームアップをしていると、3年が次々にやって来てそれぞれのな練習メニューを始めた。
しばらく練習をしていた海堂は、ふと辺りを見回して乾が来ていないのに気付いた。
 その瞬間、夢の感覚がリアルによみがえってきて、ふいに訳も分からず泣きそうになるのをグッとこらえた。
 ほどなくして海堂は、大きく深呼吸をすると手塚の所へ向かった。
「部長、先生の所に行く用事があったので出てきます」
 と言って、手塚の返事も待たず海堂は部活を抜けて部室へと駆けていった。
 自分にも分からない衝動にかられて部室のドアを開けて中に入ると、そこにはジャージに着替えている乾がいた。
 それを見た海堂は突然ポロポロと泣き出した。自分でも訳が分からず、出てくる涙を拭いていると、乾も少し驚いたようで、一瞬反応が遅れた。
「どうした、海堂」
 乾は着替え終わると海堂のそばまで来た。
 海堂は何も言わず、ギュッと目を瞑りうつ向いている。
 乾は海堂の額にキスをすると、両手で海堂の顔を包んで上を向かせ唇にキスをした。
「何があったんだ、海堂」
 そう聞かれても海堂は黙ったまま、ただ首を横に振るばかり。
 それを見た乾は海堂を抱き締めた。
 しばらく2人はそうしていると、海堂は段々落ち着いてきたのか、途切れ途切れに話し始めた。
「自分でもよく分かんねーんだけど‥‥コートで練習してたら、みんな来てるのに先輩だけいなくて…変な気持ちになるし‥‥で、部室まで来てみたら先輩がいたから…」
「うん」
「それで、見たらホッとして‥‥」
 再び泣きそうになる海堂に乾はポンポンと背中を叩いた。
「つまり海堂は俺がいなくて寂しかったってことなのかな?」
 海堂が黙って小さくうなずいて、
「なんか1人になるような気がして‥‥」
 そう言うと、乾は海堂をギュッと抱き締めて離れると、もう1度キスをした。
 少し顔を赤くしながらも海堂は乾の舌を容易に受け入れると、何の躊躇いもなく自ら舌を絡ませた。
 お互いの舌が気持ちを探るかのように混ざり合いながら、粘着質な音が次第に大きくなっていた。
「‥‥っん‥んんっ‥‥はっ‥」
 その間にも乾は海堂の短パンの中に手を入れ、うしろの穴をほぐそうとしていた。
「ダメ‥っス。やめてください」
「駄目だよ。そんなこと言った海堂が悪いんだからね‥‥仕掛けたのは海堂なんだから‥‥」
 乾は海堂の耳元に唇を近付けた。
「‥‥俺がいるってことを存分に感じてもらうよ‥‥」
 そう言って、乾は海堂の中に指を2本入れた。
「いたっ‥‥やっ‥‥いっ‥やぁ‥」
 いきなり2本も入れられては痛かったようだが、慣れている乾の長い指が入れば、自然に体は反応してしまう。
「どうだい海堂。指だけでもうこんなになってきてるよ‥‥」
「そん‥‥なぁ‥ぁあっ」
 海堂の声を聞きながら乾は指を更に奥へと進めていく。
「ぃやっ‥‥っあぁ‥あっ‥」
「これからだよ海堂‥‥ここ‥」
 そう言って乾は、海堂の奥の部分を擦るようにひっかいた。
「あぁん‥‥やっ‥あっ、そこっ‥やぁぁっ‥」
 一段高い声で海堂は喘ぐと、乾にしがみ付いた。
「ん‥‥。‥あと4分38秒‥時間もないか‥‥そろそろ‥」
 ぶつぶつ言いながらも、海堂の敏感な所をこすっていた乾は手を止めた。
 海堂は押し寄せる快感から解放されてほっとする反面、中途半端にたかぶった気持ちをどうにかしてほしいとゆう思いになったのも束の間、乾は指を抜いて、海堂を反対に向かせると同時に短パンをずらした。
「ちょっ‥‥せんぱい‥‥?‥っんあぁ‥」
 片手で海堂のモノを握り込むと、乾はズボンを前だけ下ろして自分のモノを2、3回扱き、先を海堂のうしろにあてた。
「‥‥いれるよ‥‥」
 そう言うと、乾は力が入らない海堂の中に一気に押し込んだ。
 いきなりの衝撃に海堂はそばにあったロッカーの縁を掴んだ。
「‥‥っっんっ‥‥」
「‥‥どう海堂、感じる‥‥?‥んっ」
 海堂の返事を待たずに乾は動き始めた。
「‥‥やっ‥‥あっ‥‥」
「‥‥確かこの辺だったよね‥‥っっ‥‥」
 乾がほとんど独り言に近い言葉を言うと、海堂の敏感な部分に乾の先が触れた。
「ぁあっ‥‥んっっ、っや‥‥あぁっ‥」
 海堂が喘ぐと同時に乾は、海堂のモノにあてていた手を動かした。
「‥‥やっ‥‥ぁ。ダ‥メェ‥‥っんんそっ‥ちぃ‥っ」
「んっ‥‥じゃぁ、こっちなら‥‥いいのかい?」
 乾は手の動きを止めて海堂の中を激しくかき回す。
「あんっ‥‥あっっ‥‥ちがっ‥ぅんっ‥あぁっ」
 海堂は力が入らず、崩れ落ちそうになるが、ロッカーにつかまりかろうじて体を支えていた。
 乾も海堂の腰を掴んで立たせながら、さらに押し込み海堂のいい所を何度も擦る。
 海堂は激しく襲ってくる快感で頭が一杯だった。
「んんっ‥‥もぉ‥ぅ‥やっ。‥‥あっいぃっ‥‥」
 乾は海堂の耳に顔を近付けると、
「海堂‥‥俺を感じて‥‥」
 と言って、一気に深く押し込んだ。
「‥‥っんあぁっっっ‥‥」
「‥‥っうぅっ‥‥」
 海堂は体をこわばらせてイクと、あとを追うように、乾も海堂の背中に体を重ねて果てた。




「‥‥部室もなかなかいいな‥‥と。‥‥おっと、2分13秒オーバーか‥‥ふふっ‥‥」
 乾が独り言を言いながら着替えているのを、海堂は傍らで聞きながらため息をつく。
「何言ってるんスか、先輩」
「いやなに、今後の参考にね。ところで海堂。詳しいことは教えてくれないのか?」
 そこには、ノートに向かっているいつもの乾の姿があった。
「いや‥‥今思えば、先輩がいないとダメなんだなぁと思って‥‥」
 少し照れながら、だんだん消え入りそうになる声で海堂は言った。
「海堂、それはすごい殺し文句だよ」
 乾は少し横を向いてメガネをかけ直すと、海堂の所まで行き、うしろから抱きついた。
 海堂の肩に顎を乗せながら、しばらくそうしていたが、何もしてこない乾を不思議に思った海堂は恐る恐る声を出した。
「‥‥せんぱい‥‥?」
「今度は俺が海堂を感じる番‥‥」
 首筋に乾の息がかかり、海堂はくすぐったそうに少し赤くなりながらもぞもぞしているが、背中に感じる乾の温もりに動くことが躊躇われた。
「‥‥海堂‥感じてきちゃった?」
「ばっ‥‥そんなことねぇよ!」
 そう言った海堂は耳まで赤くなっていた。
 乾は海堂の返事も気にせずに、シャツの中に手を入れて胸をまさぐる。
「‥‥なに‥してるんスかぁ‥‥」
「もう1回しよう‥‥?」
「‥‥部活‥がぁっ‥‥」
 海堂のうわずっていく声を聞きながら、乾は胸の突起を擦っていた。
「部活‥‥戻らないと‥‥」
 乾はそれを聞いて手を止めた。
「じゃあ、1つだけお願い聞いてくれる?」
 乾はうしろから抱きついたままの姿勢で椅子の所まで移動すると、座って自分の膝の上に海堂を座らせた。
「5分だけでいいからこのままで居させてくれないかな?‥‥何もしないから‥‥」
 わずかに上目使いになった乾に疑いの目を向けながら、海堂は考えていた。
「神に誓って何もしない。海堂を感じていたいんだ」
 騙されたかな、と思いながらも海堂は黙ってうなずいた。
 それから乾は約束通り静かにしていたが、心配になって海堂が様子を窺うと、規則正しい息遣いが聞こえてきた。
 至近距離で乾の寝顔を見たことがない海堂は思わずまじまじと眺めて、充分堪能した後、小さく声をかけた。
「先輩」
 乾は身じろぎをしながら、顔を海堂の首元にうずめた。
「ん〜、やっぱり海堂はいいな‥‥3分22秒も寝過ごしたのか‥‥」
 そう言っている乾を見ながら海堂は口元を綻ばせて、乾の膝から立ち上がった。
「もう、いいっスよね?オレ、部活に戻ります」
「あぁ、俺も後から行く」
 部活の準備を始めると、いつもの乾に戻っていた。
 滅多に見られないものを見て嬉しくなった海堂は、満足した様子で部室を後にした。




END



○大花さんの乾のセリフを読むと、自動的に津田声で脳内変換してしまう私です。だって『2分13秒オーバーか…』とか、乾さん普通に言いそうなんですもん!!! 恐ろしいほど乾の特徴を捉えていてすごいとしか言いようがないです(感服 /睦月あじさい
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